課題や仕事の納期が近づいてきて、もうひと踏ん張りしたいときエナジードリンクを飲む人も多いと思います。
飲めば活力がブーストされ、パフォーマンスが向上するでしょう。
ただし、メリットは一時的です。
むしろ、デメリットの方が勝ちます。
実際に、多くのメタ分析でエナジードリンクの健康への被害がわかってきました。
「砂糖」と「カフェイン」の組み合わせが心と体を蝕みます。
では、エナジードリンクが及ぼす悪影響についてデータを5つ見ていきましょう。
その1.2型糖尿病のリスクが上がる
エナジードリンクは2型糖尿病のリスクをあげます。
砂糖とカフェインの組み合わせがゴリゴリに血糖値を上げるからです。
高すぎる血糖値は膵臓に負担がかかります。
エナジードリンクを飲む
↓
血糖値が急上昇する
↓
膵臓からインスリンが大量に分泌される
↓
膵臓が疲弊する
↓
インスリンの分泌が悪くなる
↓
2型糖尿病になる
実際に、エナジードリンクは2型糖尿病のリスクが高いです。
2015年にアメリカで実施されたメタ分析では、2型糖尿病と砂糖入り飲料の関係が調べられました。
なお、調査の対象者はアメリカとイギリスの成人とのこと。
調査の結果、次のことがわかりました。
エナジードリンクやジュースを1日に2杯以上飲むと更にリスクは高まります。
カフェインも血糖値を上げる
砂糖は当たり前として、カフェインも血糖値を上げる働きがあります。
カフェインは交感神経を刺激して、血糖値を上げるストレスホルモンの分泌を促すからです。
つまり、砂糖+カフェインは最悪の組み合わせということ。
実際に、単独で砂糖やカフェインを摂取するより両方を一緒に取った方が血糖値が高めることがわかっています。
アメリカのミネソタ州にあるメイヨー・クリニックの実験では、エナジードリンクが及ぼす人体への影響について調べられました。
実験の対象者は2つの条件で血糖値を調べられました。
- カフェイン入り
- カフェイン抜き
カフェイン入り条件は240mgのカフェインが入ったエナジードリンクを飲みます。
カフェイン抜き条件はカフェインが入っていないエナジードリンクを飲んだそうです。
なお、実験に使われた商品名はロックスターとのこと。
ロックスターには砂糖が使われています。
そして、エナジードリンクを摂取する前と摂取30分後の血糖値や血圧などを測定されました。
測定の結果、砂糖+カフェインに相乗効果が見られました。
全体的にカフェイン入りが高いことがわかります。
砂糖+カフェインに相乗効果があると言えるでしょう。
ノルアドレナリンが高くなっていることもポイントです。
インスリンの効きが悪くなる
エナジードリンクは、血糖値を上げるストレスホルモンを大量に分泌します。
などなど。
これらのストレスホルモンは血糖値を上げるだけでなく、深刻な問題を引き起こします。
その深刻な問題というのが、インスリンの効きが悪くなってしまうこと。
インスリンは血糖値を下げるホルモンです。
血糖値を下げるのはコイツしかいません。
ストレスホルモンはインスリンの働きを阻害します。
一時的であれば問題ありません。
ですが、慢性的にその状態が続くとインスリンのパワーが落ちて効きが悪くなってしまいます。
すると、血糖値が下がらなくなり2型糖尿病の出来上がりです。
コーヒーはエナジードリンクより良い
ちなみに、エナジードリンクよりも若干カフェインが多いコーヒーもヤバそうに見えます。
たしかに、コーヒーもストレスホルモンを誘発するでしょう。
ですが、コーヒーにはクロロゲン酸という血糖値を安定させるポリフェノールも入っています。
そのため、コーヒーを飲んでも2型糖尿病のリスクは高まりません。
よほどカフェインが強いコーヒーや大量の砂糖を使用しない限り、血糖値の安定面でコーヒーはエナジードリンクより良いと言えます。
人工甘味料は安全ではない
エナジードリンクは砂糖とカフェインの組み合わせにより2型糖尿病のリスクを高めています。
ということは、シュガーフリーの人工甘味料を使ったエナジードリンクであれば問題ないと思われた人もいるかもしれません。
しかし、人工甘味料は安全とは言い難いです。
人工甘味料も2型糖尿病のリスクに関わっています。
アメリカで実施された大規模調査では、人工甘味料と2型糖尿病の関係について調べられました。
20年に渡って追跡調査したそうです。
そのうち、2型糖尿病になったのは6.6%とのこと。
調査の結果、次のことがわかりました。
非常にリスクが高いと言えるでしょう。
他の調査データでも人工甘味料は砂糖と同程度のリスクを持っていました。
人工甘味料も避けるのが無難です。
その2.心臓と血管にダメージを負う
エナジードリンクは心臓と血管に負担がかかります。
交感神経が高ぶり、心血管がストレスを受けるからです。
エナジードリンクを飲む
↓
ストレスホルモンが大量に分泌される
↓
交感神経が高ぶる
↓
心血管がストレスを受ける
実際に報告されたエナジードリンクの健康被害では心血管に関するものが半数以上を占めています。
- 不整脈
- 心停止
- 心筋梗塞
- 心臓発作
- 大動脈解離
- 冠動脈血栓症
などなど。
ただし、主な発症の原因は過剰摂取によるものです。
とはいえ、命に関わるレベルと言えるでしょう。
しかも、250mLのエナジードリンクを3缶飲んだだけで死亡した例もあります。
たった2缶で心血管は狂う
アメリカにあるウェイン州立大学の実験では、エナジードリンクが及ぼす心血管への影響を調べられました。
実験の対象者は市販されているエナジードリンクを毎日2缶飲むように指示されます。
なお、エナジードリンクには砂糖と100mgのカフェイン入っていました。
そして、エナジードリンクを飲む前と飲んだ30分〜4時間後の心血管に関する測定を行ったそうです。
実験の結果、エナジードリンクの摂取が心血管に影響を及ぼしていました。
- 脈拍が11%早くなった
- 最高血圧が9.6%増加した
- 最低血圧が7.8%増加した
しかも、実験開始1日目よりも7日目の方が影響が大きかったです。
毎日、エナジードリンクを飲み続けるとリスクは高まり続けます。
コーヒーより健康被害が大きい
コーヒーを飲んで眠れなくなったり、気分が悪くなったという人もいるでしょう。
多少なりともコーヒーで健康被害を受けることはあります。
しかし、コーヒーよりエナジードリンクの方が健康被害が大きいです。
カナダで実施された調査では、コーヒーとエナジードリンクが及ぼす健康への影響を調べられました。
コーヒー又はエナジードリンクによる健康被害についてアンケートを実施したそうです。
- 不眠
- 胸痛
- 頭痛
- 嘔吐
- 吐き気
- 早い脈
などなど。
調査の結果、次のことがわかりました。
エナジードリンクの方が健康を害します。
単独のカフェインは比較的安全
ちなみに、単独でカフェインを評価すると心血管のリスクはほぼありません。
多くの調査で、カフェインは心血管リスクと関係がないことがわかっています。
なので、砂糖の入っていないコーヒーであれば健康的と言えるでしょう。
カフェインの代謝能力が低い人は要注意
ただし、カフェインの代謝能力が低い人は例外です。
アメリカで実施された調査では、カフェインの代謝能力と心筋梗塞の関係を調べられました。
カフェインの代謝能力とは、カフェインを消化するスピードのこと。
体内にカフェインが長く残るような人は、カフェインの代謝能力が低いと言えます。
調査の結果、次のことがわかりました。
他の調査でも同様の結果が出ています。
カフェインの代謝能力が低い人はコーヒーにより高血圧を発症しやすくなるそうです。
コーヒーはエナジードリンクより安全ですが、体質次第で気をつける必要があります。
その3.情緒が不安定になる
エナジードリンクは精神面にも支障をきたします。
情緒が不安定になると言えるでしょう。
エナジードリンクを飲む
↓
ストレスホルモンが大量に分泌される
↓
不安やイライラが強くなる
うつ病などの精神疾患にかかるリスクも高まります。
韓国で実施された大規模調査では、エナジードリンクが及ぼす健康への影響を調べられました。
調査の結果、次のことがわかりました。
更に、エナジードリンクの消費量が増えると情緒の悪化が加速します。
抑うつが大きい人ほど、エナジードリンクの消費量が多いです。
パニックを起こす
エナジードリンクはストレスホルモンを分泌して交感神経を高めます。
脈が早くなり、瞳孔は拡大。
体は一気に戦闘モードへ。
それで、集中力が高まるメリットもありますが、パニックを引き起こす可能性もあります。
ブラジルで実施された実験では、カフェインがパニック発作を誘発しました。
なお、実験の対象者は全員パニック障害の患者です。
実験の対象者は2つの条件で、パニックが誘発されるかテストされました。
- カフェイン入りコーヒー
- カフェイン抜きコーヒー
カフェイン入りコーヒーには、480mgのカフェインが入っています。
エナジードリンク5〜6缶程度のカフェインです。
カフェイン抜きコーヒーは、カフェインが一切入っていません。
実験の結果、カフェインがパニック発作を起こしました。
カフェイン抜きコーヒーでは、パニック発作は一切起きていません。
精神的にナイーブな人は、カフェインにやられる可能性が高いです。
実験では高用量のカフェインが使われましたが、もっと少ないカフェイン量でもパニックは起きます。
体調が悪ければパニックを起こす確率は上がるでしょう。
それに、エナジードリンクはコーヒーより交感神経を高める効果が高いです。
より精神的混乱を招きます。
その4.不眠症になる
エナジードリンクは眠気覚ましになります。
カフェインの覚醒作用により目が覚めるでしょう。
しかし、その覚醒作用により睡眠に支障をきたします。
エナジードリンクを飲む
↓
カフェインの覚醒作用で目が覚める
↓
カフェインが体内に残る
↓
眠れなくなる
実際に、エナジードリンクを飲む人ほど睡眠の質が悪いです。
ペルーで実施された調査では、カフェイン入り飲料が及ぼす睡眠への影響を調べられました。
カフェイン入り飲料とは、コーラやエナジードリンク、コーヒーなどです。
調査の結果、次のことがわかりました。
たった週3缶で、ここまで影響があります。
コーヒーは午前中まで
ちなみに、コーヒーのようにカフェインが入った飲料は午前中までにした方が良いです。
できれば、午前11時までに飲み終わりましょう。
人によってカフェインの代謝能力が違います。
カフェインが抜けるまで12時間くらいかかる人もいるそうです。
睡眠の質が悪いと自覚している人は気をつけましょう。
エナジードリンクに関しては午前も飲まない方が良いです。
その5.長期的なパフォーマンスが下がる
エナジードリンクは短期的に見ればパフォーマンスを高めます。
集中力は増し、意欲も湧くでしょう。
しかし、長期的に見ればデメリットが大きいです。
情緒の悪化や睡眠に問題をきたします。
そのため、長い目で見るとパフォーマンスが落ちるということ。
実際に、アメリカの大学生を対象にした調査では、エナジードリンクの消費量が増えるほど学業成績が下がるという相関が見られました。
まとめ
エナジードリンクは命を削ります。
「砂糖」と「カフェイン」は悪魔の組み合わせです。
身も心もボロボロになってしまいます。
一切、飲まないことが懸命でしょう。
- A Review of Energy Drinks and Mental Health, with a Focus on Stress, Anxiety, and Depression
- Caffeinated Energy Drinks — A Growing Problem
- Energy drinks: Getting wings but at what health cost?
- Safety issues associated with commercially available energy drinks.
- Energy Drink Consumption: Beneficial and Adverse Health Effects
- Health Effects of Energy Drinks on Children, Adolescents, and Young Adults
- Energy Drinks and the Neurophysiological Impact of Caffeine
- Consumption of sugar sweetened beverages, artificially sweetened beverages, and fruit juice and incidence of type 2 diabetes: systematic review, meta-analysis, and estimation of population attributable fraction
- Evolving insights regarding mechanisms for the inhibition of insulin release by norepinephrine and heterotrimeric G proteins
- The Disparate Effects of Epinephrine and Norepinephrine on Hyperglycemia in Cardiovascular Surgery
- Adrenaline: insights into its metabolic roles in hypoglycaemia and diabetes
- Cortisol dysregulation: the bidirectional link between stress, depression, and type 2 diabetes mellitus
- Diurnal Salivary Cortisol, Glycemia and Insulin Resistance: The Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis
- Changes in Insulin Sensitivity Following Administration of the Clinically-Used Low-Dose Pressor, Norepinephrine
- Investigation of the Relationship Between Chronic Stress and Insulin Resistance in a Chinese Population
- Adrenergic System Activation Mediates Changes in Cardiovascular and Psychomotoric Reactions in Young Individuals after Red Bull© Energy Drink Consumption
- Systematic review of randomised controlled trials of the effects of caffeine or caffeinated drinks on blood glucose concentrations and insulin sensitivity in people with diabetes mellitus
- Caffeine Ingestion Before an Oral Glucose Tolerance Test Impairs Blood Glucose Management in Men with Type 2 Diabetes
- Caffeine’s impairment of insulin-mediated glucose disposal cannot be solely attributed to adrenaline in humans
- A Randomized Trial of Cardiovascular Responses to Energy Drink Consumption in Healthy Adults
- Sugar-sweetened and artificially sweetened beverage consumption and risk of type 2 diabetes in men
- Sweetened beverage intake and risk of latent autoimmune diabetes in adults (LADA) and type 2 diabetes
- Sucralose decreases insulin sensitivity in healthy subjects: a randomized controlled trial
- Energy Drinks and the Risk of Cardiovascular Disease: A Review of Current Literature
- Death of a young man after overuse of energy drink
- Effect of “energy drink” consumption on hemodynamic and electrocardiographic parameters in healthy young adults
- Impact of High Volume Energy Drink Consumption on Electrocardiographic and Blood Pressure Parameters: A Randomized Trial
- Effects of energy drinks on the cardiovascular system
- Energy Drinks and Their Impact on the Cardiovascular System: Potential Mechanisms
- Cardiovascular and Autonomic Responses to Energy Drinks—Clinical Implications
- Caffeine’s Vascular Mechanisms of Action
- Caffeine and Arrhythmias: Time to Grind the Data
- Caffeine Effects on the Cardiovascular System
- Caffeine and cardiovascular diseases: Critical review of current research
- Adverse effects of caffeinated energy drinks among youth and young adults in Canada: a Web-based survey
- The Relationship of Coffee Consumption with Total and Disease-Specific Mortality: a Cohort Study
- Coffee consumption and mortality in women with cardiovasculardisease
- Long-Term Coffee Consumption and Risk of Cardiovascular Disease: A Systematic Review and a Dose-Response Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies
- Association of Coffee Consumption With Overall and Cause-Specific Mortality in a Large US Prospective Cohort Study
- Coffee consumption after myocardial infarction and risk of cardiovascular mortality: a prospective analysis in the Alpha Omega Cohort
- Coffee, CYP1A2 Genotype, and Risk of Myocardial Infarction
- CYP1A2 genotype modifies the association between coffee intake and the risk of hypertension
- The blood pressure-elevating effect of Red Bull energy drink is mimicked by caffeine but through different hemodynamic pathways
- Comparison of the Effects of Energy Drink Versus Caffeine Supplementation on Indices of 24-Hour Ambulatory Blood Pressure
- Association between energy drink intake, sleep, stress, and suicidality in Korean adolescents: energy drink use in isolation or in combination with junk food consumption
- Caffeine challenge test and panic disorder: A systematic literature review
- A caffeine challenge test in panic disorder patients, their healthy first-degree relatives, and healthy controls
- Consumption of energy drinks by children and young people: a rapid review examining evidence of physical effects and consumer attitudes
- Sleep Quality, Sleep Patterns and Consumption of Energy Drinks and Other Caffeinated Beverages among Peruvian College Students
- Effects of the Red Bull energy drink on cognitive function and mood in healthy young volunteers
- Influence of energy drink ingredients on mood and cognitive performance
- Energy drink consumption and the relation to socio-demographic factors and health behaviour among young adults in Denmark. A population-based study
- Perceived Stress, Energy Drink Consumption, and Academic Performance Among College Students