うつ病になれば社会活動が困難になります。
どうしても消えない不安や抑うつ。
何事にも興味関心を持てない。
うつを経験した方は、うつ病がどんなに辛いか知っています。
もう2度とうつ病になりたくないですよね。
しかし、うつは再発しやすい病気です。
しっかり再発防止をしなければなりません。
実は脳の海馬と呼ばれる領域が弱いとうつを再発しやすいそうです。
うつを何度も再発している方は海馬が弱い可能性があります。
ですが、海馬は鍛えることができます。
きっと、うつ病の再発を防止できるでしょう!
海馬が弱いとうつ病になる
海馬とは脳の一部のこと。
記憶を司っていて新しく物事を覚えたり、エピソードを記憶するときに活躍します。
もし、海馬が弱ってしまうと記憶障害を起こします。
例えば、アルツハイマーは海馬の縮小によるものです。
うつ病も海馬と関わりがあります。
海馬が弱い人ほど、うつ病になりやすいです。
ただし、海馬は鍛える方法があるので後ほど紹介します。
では、海馬とうつの関係について5つの調査データを見てみましょう。
その1.うつ病は海馬の体積が10%小さい
デンマークのオーフス大学病院のメタ分析によると、うつ病の人は健康的な人と比べると海馬の体積が10%弱ほど小さかったそうです。
つまり、海馬が小さい人はうつになりやすいということ。
その2.うつ病を経験すると海馬の体積が小さくなる
うつ病になりやすい方は、海馬が小さい傾向です。
ただし、後天的にも海馬は小さくなることがあります。
というのも海馬はストレスに対して非常に脆弱です。
強いストレスを浴びると、海馬は縮小します。
アメリカのフロリダ州立大学の調査では、うつ病を経験した人は海馬の体積が小さくなったそうです。
調査は4年間にも及びました。
調査の結果、うつ病を経験した人ほど4年間で海馬の体積が小さくなったそうです。
もちろん、加齢で海馬は縮小するものです。
ですが、健康な人と比べてもより大きい海馬の縮小が確認できています。
その3.海馬の体積が小さいと抑うつは4倍になる
海馬の体積と抑うつ症状は関係があります。
アメリカのテキサス大学の調査では、海馬の体積が小さいほど抑うつが大きくなったそうです。
調査の対象者はMRIにより海馬の体積を調べられました。
また、QIDS-SR(Quick Inventory of Depressive Symptomatology Self-Report)と呼ばれるアンケートで抑うつ症状を答えたそうです。
調査の結果、海馬の体積が小さくなるほど抑うつが大きくなりました。
海馬が小さい人は全体平均の約4倍も抑うつが大きかったそうです。
その4.早期に寛解したうつ患者は海馬の体積が大きかった
海馬の体積が大きければ、その分早くうつ病から回復します。
Biological Psychiatryという学術雑誌に掲載された調査によると、早期に寛解したうつ患者は海馬が大きかったそうです。
なお、調査の対象者は全員うつ患者で薬物治療を受けています。
調査の対象者は海馬の大きさを調べられました。
海馬の大きさが寛解のスピードに影響を与えるかを調べるためです。
調査期間は8週間でした。
8週間の調査における寛解の状況は次の通り。
- 30%の人が寛解した
寛解した30%のうつ患者は海馬が大きい傾向でした。
8週間で海馬が大きくなったのではなく、元々大きかったということです。
反対に、8週間で寛解しなかったうつ患者は海馬が小さい傾向でした。
うつを患ったとしても、海馬が大きければ早期寛解しやすいと言えます。
その5.海馬の体積が小さければ1年以内にうつを再発する
海馬の体積は、うつの再発リスクに関わっています。
ドイツのハイデルベルク大学の調査によると、海馬が小さい人は1年以内にうつを再発する可能性が高いそうです。
なお、調査の対象者は全員うつ患者です。
調査期間は2年にも及びました。
2年間の調査における寛解の状況は次の通り。
- 86%の人が寛解した
- 37%の人が平均47.95週間後に再発した
1年以内に37%がうつを再発したことになります。
このうつを再発させた人たちの海馬を調べると、あることがわかりました。
それは、海馬が小さいということ。
海馬が小さければうつを再発させやすいと言えます。
運動は海馬を鍛える!
海馬が弱い、もしくは弱くなってしまうとうつ病になりやすいです。
それだけでなく、うつを長期化させてしまうでしょう。
うつを予防するためには、海馬の強化が必要です。
では、どうやって海馬を強化するか?
答えは「運動」です。
運動は海馬を強化し、うつを予防してくれます。
6ヶ月の有酸素運動で海馬の体積が4%増加した
カナダのバンクーバーで実施された実験によると、6ヶ月の有酸素運動で海馬の体積が4%増加したそうです。
なお、実験の対象者が全員軽度の認知障害とのこと。
実験の対象者は3つのグループにわけられます。
- 有酸素運動
- 筋トレ
- ストレッチ
どの種類の運動が海馬の強化に最適なのか比較するために、3つ運動グループが用意されました。
結論を先にいうと、海馬を強化したのは有酸素運動のみです。
では、効果があった有酸素運動のプログラムを紹介します。
実施された運動は屋外ウォーキングです。
実験の結果、6ヶ月の有酸素運動で海馬の体積が4%増加しました。
筋トレやストレッチでは、海馬の体積は増えていません。
有酸素運動はうつ病の再発率を8%に抑える
有酸素運動により海馬の体積が増加したからといって、うつの再発を予防できるかは別です。
ですが、実際のところ有酸素運動はうつの再発を防止します。
アメリカのデューク大学医療センターの実験では、継続的な有酸素運動によりうつ病の再発率を8%に抑えられたそうです。
実験では中程度以上のうつ患者が集められ、治療として有酸素運動が実施されました。
ちなみに、運動による治療を運動療法と言います。
実施された運動はサイクリングマシンやウォーキングです。
なんと、有酸素運動を実施してから4ヶ月目時点でうつ患者の60.4%は寛解しました。
これは薬による治療に匹敵する数値です。
しかもそれだけでなく、寛解の維持率が非常に高いです。
運動療法は薬物治療よりも遥かに高い寛解の維持率でした。
うつの予防に運動が非常に効果があることがわかります。
言い換えると、有酸素運動はうつの再発率を8%に抑えられることができると言えます。
まとめ
海馬が弱いとうつ病になりやすいです。
何度もうつを患っている方や長期化させている方は海馬が小さい可能性があります。
しかし、有酸素運動をすれば海馬は育つでしょう。
運動を継続することで、海馬の体積は増加します。
最低でも週3回30分の運動は継続したいです。
数ヶ月、運動を継続することで海馬は強化され、うつに対する耐性がつきます。
ですが実際のところ、抑うつに対する効果の実感は数ヶ月も掛かりません。
たった1回の運動で抑うつに効果があることがわかっています。
単発の運動でも抑うつに効果があり、運動を継続することで更に抑うつに対する効果を得ることができます!
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