服の色は、印象を変える力があります。
黒い服を着ていれば、ワルく見えるそうです。
コーネル大学の研究では、黒いユニフォームを着たチームは、多くのペナルティを取られていることを発見しました。

黒は攻撃的な印象が強くなる
実は、赤も同じく攻撃的な印象を強める効果があります。
赤い服は攻撃的な印象を与える
オーストリアにあるウィーン大学の実験で、服の色が及ぼす印象への影響を調査されました。
物理的な接触のあるコンタクトスポーツで、赤いユニフォームを着ていると攻撃的で優勢に見えるそうです。
しかも、全く同じシチュエーションでも、赤を着ていると攻撃的で優勢に見えます。
ポーズや構図、背景が、全く同じだったとしてもです。

赤い服を着ているだけで、攻撃的な印象を与える
また、赤だけでなく、同時に青や緑のユニフォームについても調べられています。
緑のユニフォームは、公平に見える効果がありました。

緑は、平和な印象を与える
ユニフォームの色が印象を変える
選手と選手が争っている写真があるとします。
勝負は拮抗していて、どちらが勝ってもおかしくありません。
そこで、片方の選手のユニフォームを赤ペンで塗りつぶしてみましょう。
すると、赤ペンで塗られた選手は、攻撃的で優勢に見えてきます。

全く同じ写真でも、ユニフォームの色が違えば印象が変わる
これを実際に行ったのが、ウィーン大学の実験です。
もちろん、赤ペンなどではなくパソコンで巧妙に加工されています。
全く同じ写真をユニフォームの色だけ変えて造られました。

ユニフォームの色だけ変わったのに、ガラリと印象が変わる
簡単に、実験の詳細と結果について話していきます。
実験の対象者
実験の対象者は、スポーツに携わっている194名の学生。
平均年齢は21〜23歳ぐらいです。
- 男性:115名
- 女性:79名
1対1の格闘技の写真
実験の対象者には、あるスポーツの写真を見せられます。
あるスポーツとは、次の3つです。
- ボクシング
- テコンドー
- レスリング

全て、1対1の格闘技
選ばれた写真は、勝負が拮抗しています。
ようは、どちらが勝ってもおかしくない写真です。

一方的ではなく、いい勝負をしている写真
勝負が拮抗している写真を見て、攻撃的・公平的・優勢といったことをジャッジします。

どちらが攻撃的に見えるか?
108枚の写真をジャッジする
ただし、写真には加工が施されます。
選手のユニフォームには色が着色されました。
色は青・赤・緑の3色です。

選手のユニフォームの色だけ加工された
1枚の写真から、合計6パターンが出来上がります。
- 赤 vs 青
- 赤 vs 緑
- 青 vs 赤
- 青 vs 緑
- 緑 vs 赤
- 緑 vs 青
実験の対象者は、6パターンの写真を全部見て、それぞれに評価を下したそうです。
また、実験には18種類の写真が用意されたので、合計108枚の写真が実験に使用されました。

6パターン x 18種類
なお、使用された写真は2012年のロンドンオリンピックの写真だそうです。
青・赤・緑のユニフォームで印象は異なった
実験の結果、青・赤・緑のユニフォームで、印象(攻撃的・公平的・優勢)は異なったという結果が出ました。
次の画像は、印象(攻撃的・公平的・優勢)を棒グラフにしたもの。

棒グラフに波があるのがわかります。
波が大きければ、ユニフォームの色が印象に大きく影響を与えたということ。
とくに、赤(濃い棒グラフ)の攻撃的や優勢といったポイントが高いです。
次に、緑(白の棒グラフ)の公平性が目立ちます。

今回の実験では、青に突出したものは見当たらず
赤いユニフォームは攻撃的・優勢に見える
ボクシングでは、圧倒的に赤が攻撃的で優勢に見えています。
青と緑に大差をつけました。
そして、レスリングも同じく、赤は攻撃的・優勢に見える傾向です。

赤いユニフォームは、支配的とも言えます
ただし、テコンドーだけ他の色と大きい差を生んでいません。
統計的に有意差は認められなかったそうです。
仮説として、テコンドーは赤の面積が足りなかった可能性があります。

テコンドーは、ヘッドギアと胸の防具以外は白です
しかし、後ほど紹介するミュンスター大学の実験では、テコンドーでも赤が優勢になっています。
ミュンスター大学の実験は、画像ではなく動画です。
赤いユニフォームは公平性が低い
赤いユニフォームには、もう一つ特徴があります。
それは、公平性が低いこと。

正々堂々と戦っているように見えない
赤いユニフォームを着て、反則をするとオーバーに見られることでしょう。
ウィーン大学の別の実験では、赤を着ていたプレイヤーに対して、審判から厳し目のファウルが出されたそうです。
公平性が低くなっていると言えます。
緑のユニフォームは公平である
緑のユニフォームは、全体的に公平性が高かったです。
赤よりは確実に、公平だと言えます。

緑はスポーツマンシップ的
ただし、赤に比べ弱い印象を与える可能性も高いです。
テコンドーは動画だと赤は攻撃的
ドイツのミュンスター大学の実験でも、赤いユニフォームは攻撃的に見えたそうです。
しかも、ウィーン大学の実験で、大差が生まれなかったテコンドーで、再現されています。
ウィーン大学の実験は、静止画の比較でした。
それに対し、ミュンスター大学の実験は動画です。

動画だと、より赤が攻撃的に見える
しかも、テコンドーの動画を判断したのは素人ではなく、プロのレフェリーです。
赤いユニフォームは知覚的バイアスがかかる
赤いユニフォームは知覚的バイアスがかかるそうです。
知覚的バイアスとは、感じ取ったことに偏りが生まれること。
例えば、赤は他の色よりも攻撃的に見えます。

ウィーン大学の実験では、赤は攻撃的で優勢に見えていましたね
ミュンスター大学の実験では、赤いユニフォームを着ているとレフェリーからの評価も変わることを明らかにしました。
赤の知覚的バイアスによって、テコンドーの取得ポイントに差が生まれたのです。
実験の対象者
実験の対象者は、プロのレフェリー42名。
平均年齢は29.31歳です。
- 男性:29名
- 女性:13名
レフェリーの経験は、平均8.02年のベテランとなります。
赤vs青のスパーリング
レフェリーには、テコンドーのスパーリングの動画が見せられます。
赤いユニフォームvs青いユニフォームです。

スパーリングの相手は、同レベルとのこと
レフェリーは、スパーリングの動画を数本見せられたそうです。
そして、採点を行うように指示されました。

赤は何ポイント?青は何ポイント?
ただし、レフェリーに見せられた動画は、加工されています。
選手のユニフォームの色を変更したバージョンも見せられたそうです。
- オリジナル:赤 vs 青
- リバース :青 vs 赤
ユニフォームの色以外は変更されていません。
それ以外は、同じ動画です。
赤いユニフォームは取得ポイントが多い
実験の結果、赤いユニフォームの方が取得ポイントが多くなりました。

赤枠で囲っているのが赤いユニフォームで、青枠で囲っているのが青いユニフォームです。
棒グラフが高いほど、取得ポイントが高いという意味となります。

赤いユニフォームを着ると、取得ポイントが高くなった
左のCompetitors A(赤枠)とCompetitors A(青枠)は、同一人物です。
同一人物なのに、ユニフォームの色を変更しただけで、取得ポイントが変わってしまいました。

赤の知覚的バイアスが発生した
赤は良くも悪くも攻撃的に見えてしまうと言えます。
まとめ
赤には知覚的なバイアスがあります。
他の色よりも攻撃的な印象を与えやすい色です。
赤い服を着て、暴れたりすると悪い印象が強く残るでしょう。
ただ、赤は魅力を高める色でもあります。
TPOに合わせて、赤い服を使い分けましょう。